FastNeuraは、2026年6月8日から12日に開催された「2026年度 人工知能学会全国大会(第40回)」(JSAI2026)にて、脈波から心電図を生成するAIモデルに関する研究成果を発表しました。

脈波から心電図を生成するAI、その新たな一歩
今回の発表は「脈波から心電図を生成するモデルの長時間対応と生理学的制約の導入」というテーマで行われました。スマートウォッチなどで手軽に取得できる脈波(PPG)から、医療現場で重要な情報源となる心電図(ECG)を生成するAIモデルに焦点を当てた研究です。
これまでのPPGからECGを生成する研究では、波形を似せることはできても、心拍のタイミングやRR間隔、心拍変動(HRV)といった生理学的な特徴を正確に再現することが課題とされていました。
FastNeuraが今回発表したモデルは、この課題を解決するために、RR系列(心拍と心拍の間隔)を中間表現として取り入れる二段階構造を提案しています。これにより、脈波から心電図を生成する際に、心拍のタイミングが大きくずれないようにする制約を加えることが可能になりました。
研究の具体的な内容と期待される効果
この研究では、まず脈波からRR系列を推定し(Stage A)、次に推定されたRR系列を条件としてECG波形を生成する(Stage B)という二段階のプロセスを踏みます。このアプローチによって、単に心電図らしい波形を作るだけでなく、心拍の間隔やリズムといった生理学的な特徴を考慮した生成を目指しています。
評価にはPPG-DaLiAデータセットが用いられ、30秒および60秒の時間窓での比較が行われました。その結果、提案された手法は心拍タイミングに関する誤差を減らし、脈波から心電図を生成する際の生理学的な整合性を高める可能性が示されました。
ウェアラブルデバイスの普及がもたらす可能性
スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスの普及により、脈波や心拍といった日常的な生体データを簡単に取得できるようになりました。しかし、臨床的に重要な心拍間隔やHRVなどの指標は、一般的に胸部電極を用いる心電図から得られることが多く、日常生活での常時取得は負担が大きいという課題があります。
そこで、手軽に取得できる脈波から、より多くの生理学的情報を含む心電図を推定・生成する「PPG2ECG」技術は、ウェアラブルヘルスケアや日常モニタリング、遠隔医療といった分野で非常に重要な応用可能性を秘めています。
FastNeuraは、脳波・心拍・脈波などのマルチモーダル生体データをAIで解析し、人間の状態を推定する生体適応型AIプラットフォーム「Sync OS」の研究開発を進めています。今回のPPG2ECGに関する研究は、このプラットフォームの基盤技術の一部であり、低負担な生体信号をより高次の状態推定や介入判断に活用するための重要なステップです。
日常的に取得しやすい脈波から、生理学的に整合性のとれた心電図情報が推定できるようになれば、睡眠の質、疲労度、ストレスレベル、回復状態、認知負荷、体調変化などをより詳細に把握できるようになるでしょう。
今後の展望
今回の研究では、心拍タイミングやRR間隔といった生理学的特徴を考慮することの有効性が示されました。一方で、今後は、拍ごとの微小な時間揺らぎの再現や、RR予測器の精度向上、QRS波形周辺に特化した損失関数の導入など、さらなる研究課題に取り組んでいくとのことです。
FastNeuraは、これからもウェアラブルデバイスなどで取得できる生体データを活用し、医療・ヘルスケア、睡眠・回復支援、ウェルビーイング、モビリティ、住環境、AIエージェントなど、幅広い分野への応用を目指して研究開発を推進していくそうです。
株式会社FastNeuraについて
株式会社FastNeuraは、東京大学発のニューロテック・スタートアップです。脳波・心拍・脈波などのマルチモーダル生体データとAIを活用し、人間の認知状態・情動状態・コンディションを推定する技術、および環境・デバイス・AIエージェントと接続する生体適応型AIプラットフォーム「Sync OS」の研究開発を行っています。
詳細については、以下のウェブサイトをご覧ください。
https://fastneura.com/


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