発電もできちゃう!次世代の有機EL素子が開発されたってホント?
スマートフォンやテレビでおなじみの「有機ELディスプレイ」って、とってもキレイで省エネですよね。一方で、太陽の光を電気に変える「太陽電池」も、私たちの暮らしに欠かせない技術になっています。
もし、この「発光」と「太陽光発電」という、まるで真逆の機能を一つの素子で両立できたら、どんなにすごいことになるでしょう?そんな夢のような技術の開発に、千葉大学先進科学センターの深川弘彦 特任教授、NHK放送技術研究所、京都大学大学院理学研究科の畠山琢次 教授らの共同研究チームが成功しました!

画期的な「発電できる有機EL素子」の登場
これまでの有機半導体を使ったデバイスでは、光を出したり(発光)、光から電気を作ったり(発電)する機能は、なかなか高いレベルで両立させることが難しいとされてきました。しかし、今回開発された「発電できる有機EL素子」は、その常識を覆す画期的な技術なんです。
この研究のポイントは、「MR-TADF材料」という特別な材料を使ったこと。この材料と、素子の中でのエネルギーの動きをすごく細かくコントロールすることで、発光効率と発電効率の、これまであったトレードオフ(どちらかを上げるともう一方が下がる関係)を乗り越えられたんです。
発光と発電、両立の秘密
これまで、発光と発電を両立させようとすると、どちらかの効率が大きく下がってしまうのが課題でした。例えば、光をよく吸収する「ルブレン」という材料を使うと、発電効率はそこそこ良いものの、発光効率はほとんどゼロに近かったんです。
研究チームは、高い発光効率と強い光吸収を両方持つMR-TADF材料を、発電時の電子を供給する材料(ドナー)として使いました。そして、MR-TADF材料と電子を受け取る材料(アクセプター)の境界面で起こる、電荷や励起子という小さな粒子の動きを精密にコントロールすることで、発光効率(EQEEL)と発電効率(PCEPV)の両方を、これまでにない高いレベルで同時に達成することに成功しました。

緑色や橙色に光る素子では、8.5%を超える発光効率と約0.5%の発電効率を同時に実現。さらに、これまで実現が難しかった青色発光の多機能素子でも、約2%の発光効率と1%を超える発電効率を達成したんです。青色で発光する多機能素子の実現は、なんと世界初の成果なんですよ!
フルカラー化も実現!
この技術のもう一つのすごいところは、青色から赤色、そして白色まで、すべての可視光の範囲で動作する「フルカラー動作」が可能になったことです。これは、素子の中の電荷移動(CT)励起子というものの束縛エネルギー(Eb)を細かく調整することで実現できました。

Ebが小さい素子では、発電時のエネルギーロスがほとんどなく、理想的な発電ができることが分かりました。そして、このEbの大きさが発光色を決める重要な要素であることも解明されたんです。Ebをコントロールすることで、様々な色の光を出せるようになったんですね。
これから期待される未来のアプリケーション
今回の研究成果は、私たちの生活を大きく変える可能性を秘めています。例えば、以下のような応用が期待されています。
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省エネディスプレイ:部屋の光や画面の光を再利用して、バッテリーの消費を抑えることができるディスプレイ。
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可視光通信デバイス:照明として光りながら、同時に光の信号を送受信できるデバイス。
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自立駆動型光センサー:外部からの電源なしで、特定の光に反応して動くセンサー。
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情報セキュリティ端末:光を使って情報を保護するセキュリティデバイス。
この技術は、これまでの単一機能のデバイスでは実現できなかった、新しい電子機器やアプリケーションを生み出すきっかけになるでしょう。今後のさらなる効率アップや耐久性の向上にも期待が高まりますね!
この研究成果は、2026年1月20日に国際学術誌「Nature Communications」で公開されました。
論文情報
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タイトル: A pathway to coexistence of electroluminescence and photovoltaic conversion in organic devices
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著者: Taku Oono, Yusuke Aoki, Tsubasa Sasaki, Haruto Shoji, Takuya Okada, Takahisa Shimizu, Takuji Hatakeyama, Hirohiko Fukagawa
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雑誌名: Nature Communications
用語解説
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有機EL素子: 薄くて柔軟な有機半導体を使って、電流を流すと光るディスプレイ技術。バックライトがいらず、自分で光るので、色がとても鮮やかで反応も速いのが特徴です。
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有機半導体: 電気が流れる性質を持つ有機物のこと。スマートフォンなどの高性能ディスプレイに使われる有機EL素子にも応用されています。
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MR-TADF材料: 「多重共鳴(MR)」という構造を持つ新しい有機発光材料で、とても純度の高い、特に青色の光を効率よく出すことができます。また、「熱活性化遅延蛍光(TADF)」という仕組みで、本来なら光にならないエネルギーも熱の力で再利用し、高い発光効率を実現します。
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励起子: 電子と、電子が抜けた穴(正孔)が、お互いに引き合う力で結びついた状態のこと。半導体デバイスは、この電子と正孔の動きで機能します。
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電荷移動(CT)励起子: ドナー(電子をあげる側)とアクセプター(電子を受け取る側)の境界面でできる励起子の一種。電子と正孔が別々の分子の上に分かれて存在するのが特徴です。


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